【考察】ウンゴロ環境の遷移〜大魔境を振り返る〜
2017/07/11
大魔境ウンゴロが4月にリリースされてから3ヶ月。クエストローグのナーフや、新拡張の発表などを終え、環境も終了を迎えようとしています。ここで、ウンゴロ環境の振り返りをしていきましょう。
環境初期 海賊時代から恐竜時代へ
ガジェッツァンと言えば海賊環境。ありとあらゆるデッキが《海賊パッチーズ》を採用し、史上最速とも言えるその環境も《ちんけなバッカニーア》《精霊の爪》の弱体化とスタンダードの変更により海賊環境も落ち着き、後に「神環境」とも呼ばれる大魔境へと突入することになる。
大魔境ウンゴロが実装されクエストという新要素が追加された。特定の条件を達成することで著しく強力な能力を持つカードを獲得できるという全く新しいカテゴリーだ。そのクエストの中でも強力かつ構築が早期に完成したのが【クエストウォリアー】だ。
S37 レジェンド1位 posesi クエスト挑発ウォリアー
スタンダード序盤は今までのカードプールの半分が削られるため、他のデッキが構築を模索する中このデッキの完成度は高く、一瞬で環境上位に上り詰めた。アグロデッキに強いこのデッキは海賊をも駆逐し環境はコントロールへ突入する・・と思われた。
しかし、全てのコントロールデッキを淘汰すべくある一つのデッキが完成した。【クエストローグ】である。
S37 レジェンド1位 Dog クエストローグ
ローグのクエストは特に強力で簡単なクエスト条件から一瞬で場を5/5に埋め尽くしあっという間に勝負を決めてしまう。この構築は現在とは大きく異なり《モローズ》《ヴァイオレット・アイの講師》が採用されていたところを見ると、研究段階であることがよくわかる。
その後クエストローグはS37終盤の段階でほぼ完成形とも言える型が出来上がった。
このあとのシーズンで、アグロが流行ったら《怪盗紳士》ではなくウィスプが採用されたり《死角からの一刺し》《終末予言者》などの自由枠採用が出てきたが、大枠はこの時点で固まったと言える。
このように、開幕はウンゴロで実装されたクエストデッキ2種が頭角を現した。そこに追随する形で流行したのが【ミッドレンジパラディン】である。
S37 レジェンド1位 Machamp ミッドレンジパラディン
《温厚なメガサウルス》が非常に強力で、ローグデッキを押し切るアグロチックな動きや、《平等》により【クエストウォリアー】の鉄壁を退けることもでき、全てのデッキに対して対応できる柔軟性が非常に強力だった。
そして、この上記3種の環境トップデッキに対して戦うことができるデッキとして【フリーズメイジ】が再開発された。
S37 Laughing フリーズメイジ
《アイスランス》が殿堂入り、そしてスタン落ちにより《ソーリサン皇帝》《忘れ去られた松明》などバーストダメージを出すあらゆるカードが規制され、このデッキは構築不可能とまで環境変更直前には言われていたが、《魔法学者》《メディヴの従者》《始原の秘紋》を採用したこのデッキは非常に安定したデッキとして環境序盤を制圧した。
そして、その環境の結果がこちらである。
4月Tierランク
史上初、環境トップに9ヒーローが勢揃いした。たしかにクエストは脅威であったが、それを蹴散らすアグロ勢、アグロ勢に強いプリーストも環境に入り、「神環境」とまで言われた。(結果としては、このあと3ヒーローが脱落することになるが、たしかにこの時には輝いていたのである)
環境中盤【アグロはすべてを解決する】
【クエストローグ】が環境に絶対的な立ち位置となった頃、ここで環境は劇的に変化する。
まず、ローグと言えばアグロに弱い。この【クエストローグ】も完全なる新型とは言え漏れなくアグロには弱かった。そしてこのタイミングで一気にアグロデッキが激増する。
まずは大量のマーロックと《温厚なメガサウルス》という切り札を利用した【マーロックパラディン】。スタンダードを経ても29枚ものカードが規制外という【海賊ウォリアー】は、クエストウォリアーの挑発や、マーロックパラディンの《剣竜騎乗》を対策した《スペルブレイカー》の採用をして台頭。そして、これらアグロデッキの頂点とも言える【アグロドルイド】が環境を闊歩していくのだ。
S38 レジェンド6位 Ender アグロマーロックパラディン
S38 レジェンド1位 tholwmenos 海賊ウォリアー
S38 レジェンド1位 Che0nsu アグロドルイド
そして、この中盤ではカニが流行した。《ゴラッカ・クローラー》はもちろんのこと、特に強力かつ数が多かったパラディンを対策するために《飢えたカニ》はハースストーンリリースから3年を経て全盛期ともなる出世を果たした。
さらに、このアグロ環境に食い込む形で登場したのが【コントロールメイジ】だ。フリーズメイジのように見えつつもテンポメイジのような動きもする独特なデッキで、アグロ〜コントロール全てに対応できる強さを発揮した。
S38 レジェンド1位 b787 コントロールメイジ
EUにてレジェンドランク1位を獲得したPsy_Guenther選手が考案したこのデッキは、この後長らく環境トップに居座ることになる。それほどまでに多様性が高く可能性に満ちたデッキだったのだ。
環境中盤後期【新デッキの台頭】
この環境中盤は新デッキがかなり多く誕生する。そのためその2と記載したが、同じシーズン内でもめまぐるしく環境が動く。特にこのS38は多くの新デッキが登場した。
1つ目は【進化シャーマン】である。アグロに強くコントロールすらも潰せる瞬間火力を持つのがこのデッキの特徴。
S38 レジェンド上位 STR 進化シャーマン
ドッペル進化シャーマンでレジェンド二桁まで到達!どの相手でも勝てるという、もうよく分からん状態です!
最近の対戦を考慮しドッペル進化の相性表を修正しました。https://t.co/hnqzYxUOF2#ハースストーン pic.twitter.com/xl8cZS9FiD
— hint24@ハースストーン (@hint24s) 2017年5月10日
日本人プレイヤーのhint選手が考案したこのリストは、大流行していた多くのアグロデッキを淘汰する革新的なデッキだった。《動き回るマナ》、《剣竜騎乗》、マーロックシナジー、海賊シナジーなど、アグロデッキの強みであるシステムを《退化》1枚で無に帰すことができる。そして自身はアグロデッキが対応できないほどに盤面を展開し、手を打てない相手に《血の渇き》で一気に突撃する。
そして、恐るべきことにこのデッキはその完成度の高さからほぼデッキレシピが変わることなく環境終盤で台頭するという強さを見せた。それだけ【クエストローグ】と、それを倒すアグロデッキの群れが環境に色濃く残っていたことが伺える。
2つ目のデッキは【秘策メイジ】だ。
2017 EU Spring Playoffs 優勝 Hoej デッキリスト
前途の通り、この時はありとあらゆるデッキに《飢えたカニ》《ゴラッカ・クローラー》が搭載されていた。そのどちらにも対策されないアグロタイプのこのデッキはランク戦・大会で着実に結果を残していった。
環境終盤【メイジの台頭からじゃんけんへ】
中盤からメイジのデッキは非常に多岐に渡り、あらゆるメイジが結果を残すことになる。特にコントロールチックな【秘策メイジ】や逆にテンポよりの【コントロールメイジ】などが見受けられる。《魔法学者》はあまりにも強く汎用性が高かったためアグロ~コントロールまでどのデッキにでも採用されるようになった結果、このカードがついに採用される。
海賊を食べてマーロックを食べて、ついに秘策を食べるカニまで出たか。と言われるほど。
ここまでくると環境も混沌化してくる。
1.メイジデッキが流行る
↓
2.メイジに強いアグロが流行る
↓
3.アグロに強い進化シャーマンが流行る
↓
4.それらに強い挑発ウォリアー・フリーズメイジが流行る
↓
5.それに強い翡翠ドルイドまでも流行る
↓
6.コントロールデッキを駆逐するクエストローグが流行る
↓
7.クエストローグを駆逐するアグロが流行る→3へ
といったように環境が堂々巡りするのである。序盤の全ヒーロー活躍と言い、著しいメタカードで堂々めぐりするこの時期と言い、常に大魔境である。
6月Tierランク〜じゃんけんぽいぽいどっち出すの〜
相性の差が激しいデッキ同士が環境上位に集結するため、様々なデッキが結果を残した時期でもある。
そして環境が固まってきたこのタイミングでクエストローグの《地底の大洞窟》の下方修正が発表される。
環境末期【恐竜時代から氷河期へ】
7月7日から世界選手権が開催され、ウンゴロ環境の集大成となる結果を迎えた。1位〜3位がEU勢が独占する形となり、実力の差を見せつけた。
上位4名のデッキレシピはハースゲーマーズにも掲載されるため、ぜひこの環境の完成形を目の当たりにしてほしい。クエストローグが下方修正される前の最後の大会にふさわしく、クエストローグが上位3位に入る結果となった。
ランク戦では、クエストローグの《地底の大洞窟》のナーフが発表されたことで、以前からクエストローグに対して不利だったデッキが環境変更後の練習も兼ねてか環境に多く現れた。特にコントロールキラーと名高く大会シーンやラダー環境でも多く活躍している翡翠ドルイド。アグロに対して有利でコントロールに対しても8点を飛ばすヒーローパワーによる制圧力を兼ねたクエストウォリアーなども多くみられる環境になった。
このように環境は移り変わり様々なデッキが活躍する非常に良い環境と様々なプレイヤーから言われていた大魔境ウンゴロ環境もクライマックス。新拡張の凍てつく玉座の騎士団が追加された後の環境はどうなっていくのだろうか。
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